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システムエンジニアの究極的な能力
早稲田大学教授
武藤泰明
 ●水平か垂直か
 知り合いに金融系のメディアで長く記者をしていて、現在はSIerの営業をしている人がいます。もちろん金融機関が営業対象。たまに会うのですが、先日はSI業界の産業組織の再編の話で盛り上がりました。
 私は昨年対談したアバナード社の戦略について話をして、結局は、OSなどのレイヤーごとに強い会社が生き残るんじゃないかという意見。これに対して彼の意見は、SIerは顧客ごとに統合されていくはずだというものでした。
 彼の意見をそのまま書けば、SIの会社で、システムエンジニアに求められる究極的な能力は、システム構築能力ではなくて(あるいはこれに加えて)、顧客の業務プロセスについての深い知識なのだそうです。確かに、顧客がどのように仕事をしているかを知らなければ、改善も提案もできません。そして、その顧客とのつきあいが長くなれば、知識はさらに深まり、仕事のレベルが上がって、いわゆる参入障壁が形成されます。結果として長期取引が実現され、そのSIerは顧客にとって、なくてはならない存在になります。そういう顧客を多く獲得できるSIerが成長するということです。
 ●水平も垂直も、レベルが高ければ面白い
 でも、この戦略にはリスクもあります。それは、顧客がM&Aで買われる側になり、買う側の会社が別のSIerと取引しているような場合です。買う側になるような、強い顧客を持てばよいのかもしれませんが、どの顧客が成功・成長するかはわからないし、成功している会社が必ずしも買う側にならないのがM&Aの世界です。
 そう考えると、顧客との関係ではなく、高い技術や製品を持っている会社のほうが、実はリスクに強いのかもしれません。ウィンドウズのようなOSだけでなく、たとえばERPも、顧客ではなく、製品に優位性の源泉があるように思われます。そうなると、これらの会社では、システムエンジニアに求められる能力は、第一に自社製品についての知識ということになるのでしょう。じゃあ、グーグルではどうかというと、おそらく顧客でも自社製品でもなくて、新しいサービスを生み出す力が最も重視されるはずです。
武藤 泰明
(むとうやすあき)
早稲田大学教授。三菱総合研究所主席研究員を経て現職。Jリーグ理事/経営諮問委員長。専門はマネジメント。
2004マンパワーグループ・ジャパンの顧問に就任

主な著書
「本当に分かる経営戦略」
「プロスポーツクラブのマネジメント」
「人手不足 時代の人事戦略」
 ●ホンモノのSEになるために
 結論は2つあって、第一は、会社が何を優位性の源泉にしているのかによって、システムエンジニアに求める能力が違うのだということです。これは、あなたの能力を活かせるタイプの会社と、そうでない会社があるということを意味しています。
 第二は、システムエンジニアの「高い能力」とは、会社のタイプによらず、システムに関する能力を超えたものなのだという点です。顧客の未来の業務プロセスを創造する能力、自社の製品についての知識と製品を改良・開発していく能力、不特定多数のカスタマーが求めるサービスを構想する能力・・そんな能力を発揮できるようになれば、SEもホンモノだということになるのでしょう。どんなタイプの会社で、どんなホンモノになるのか。この答えを出し、自分のゴールにすることが必要なのです。
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